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一一九番通報では山林火災との通報でしたが、出場途上では山頂の一角に相当量の火災の直上が視認でき、建物火災であることは一目瞭然でした。
当火災に対応する直近の消防水利は、参道登り口に存する溜池で、現場までの道路は幅員約三m、急坂はあるものの消防車の通行は可能であり距離は約一・五km程あります。また、水利と火点までの高低差も約一五〇m以上あることから、先発中隊長は多数のポンブ車による中継送水隊形が必要と判断し後続隊の出場を要請しました。

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隊形としては、溜池の元ポンプには消防車二台を配し、各中継ポンプ車には高低差を考慮し車両一台につき一五本程度のホース延長で次のポンプ車に中継することとし、次々と到着する後続隊に順次中継隊形を指示。最終的にはポンプ車七台の連携によりニロ放水を確保し消火したものです。
四 今後の課題
この火災は、ホース延長距離が長いとはいえ放水時間までに長時間を要したのは、後続車一消防団等)の集結に手間取り、また中継ポンプの中には延長ホースの数が多すぎて次のポンプ車まで送水できず、部署位置を変更したポンプ車もあったことなどが掲げられます。
その要因として
(一)夜間のため杉木立ちにより、非常に暗い中での活動であったこと
(二)道路が曲がりくねっており、各車とも次のポンプ車を視認できない状況の中、目見当で部署位置を決定せざるを得なかったこと
(三)署、団が活用する消防無線が輻輳し中継活動に支障があったこと
などが掲げられます。
本火災後、平成三年七月一一日には再び放火により横根寺本堂に直近して建立された護摩堂が焼失する火災が発生、この火災では本職が消防隊の中隊長として出場し指揮を執り、本堂火災を教訓とした消防戦術を展開したが、中継送水開始後ホースの破裂等もあり、結局、放水可能となったのは前回の火災同様先着隊到着後約一時間後のことでした。
阪神淡路大震災以降、遠距離中継送水対策が検討されているが、さらに高揚程差のある場合、ホース耐圧を考慮した中継送水等について、今後、実戦的訓練を重ねて行く必要があると考えています。
なお、当本部としては、本件火災後管内の各神社・寺院の関係者に対し、防火管理の徹底等を強く指導するとともに、署員による無人神社の実態調査と日常における監視の強化に努めたところ、最近この種の火災は発生していません。
(河端潔)

救急・救助

茸取り入山者滑落事故
鳥取県西部広域行政管理組合消防局
はじめに
中国地方きっての名峰で、別名「伯耆富士」とも呼ばれている国立公園大山(一、七一一m)。緩やかな富士山型の地形が広がり、山容が美しいので地元の人からこの様に呼ばれている。古くは信仰の対象として、現在は観光地として各地から人々が集まり山を楽しんでいる。
大山の麓に位置する当局は、二市一二町村で構成されており鳥取県の西部を管轄している。人口約二五万人・総面積一、二〇〇km。消防体制は一局四課・四消防署・六出張所、職員数は二八四名である。
消防局を置く米子市は、「山陰の大阪」とも言われ商業が盛んであり、市の東西に広い商圏を持つ。北部に山陰随一の皆生温泉があり、大山をひかえて観光都市としての条件も備えている。
ここに紹介する事例は、大山連峰の一つで主峰から派出した唯一の山峰「烏ケ山」で起

 

 

 

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